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2014.04.26

vol.45 5月を楽しむ May Flower basket。

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花々の最も美しい季節、五月がやってきますね。

庭のバラたちはほころび、ハーブたちは緑のエネルギーを、木々は爽やかな新緑を茂らせ、
その恵みはまさに、ここ地球に生きている歓びそのものーーーです。

この特別な季節を祝うために、
昔から多くの人たちがいろいろな行事や暮らしの楽しみ事を考えたのでしょう。



娘が小学生時代に通っていたウォルドルフ・スクールでは、
5月の週末に、「メイ・フェア」が開催されていました。

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*「メイ・フェア」は、ヨーロッパでは歴史的に春の訪れと夏の豊穣を祝う日とされ、この行事の目玉である「メイポール・ダンス」では、ポールに付けられたリボンを子どもたちが持って踊り、ダンスの終わり には、リボンがきれいに編み込まれます。

花びらが舞い、青い空の元、新緑の清々しい空気を吸いながら楽しむメイ・フェアは、
春の訪れを皆で祝う、素敵な行事のひとつでした。

子どもたちは足元に鈴をつけ、走ったり踊ったりする度に、その鈴の音が可愛らしく、
頭には花の冠を被り、春色のドレスや洋服でメイポール・ダンスを踊ります。
その光景は、今でもしあわせな春の思い出として心の中に焼き付いています。


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ーーーまだ携帯電話もスマートフォンも普及していなかった昔、
夫とガーデンに出かけた時のこと。

草花に私ほどのパッションを持っていない夫がちょっと退屈になり、
ベンチに座って新聞を読み始めました。
そこに小さな男の子がやってきて、夫を不思議そうに眺めながら
「どうしてあなたはここで新聞を読んでいるの?こんなにきれいなお花たちがいっぱいあるのに。」
と言ったのです。

まるで、小さな天使が大人の夫に、大事な一言を告げていったかのような出来事でした。

大人になると現実的な日々の連続になり、
こんな美しい季節も、当たり前の光景のように思ってしまいます。

けれど、目を見開くと、
この季節の輝きは鈍感でいるにはもったいなさすぎるほどの、
奇跡的な美しさを持っています。

私たちが、もっともっとこの美しさを愛で、楽しむことで
植物たちも、そして地球自身も、共に歓び合うことができるのではないでしょうか。



日本でも有名な、今は故人となられたターシャ・テューダーさんのご著書に、
子どもたちと過ごした一年を描いた「輝きの季節」というご本があり、
5月1日の花祭りには、ご近所の家の玄関先に花かごを置いていく、
という素敵なアイデアが載せられてありました。
その頁には、女の子と男の子が、こっそり玄関先に小さな花かごを
置いていく絵が描かれています。
それはずっと私の憧れでした。

娘が小さかったある年の5月1 日、今年こそは!と意を決し、
庭からバラや花、ハーブなどを摘んで小さなバスケットや缶に挿し、
朝早くにご近所のドアにそっと下げて回りました。

もちろん差出人の名前は伏せ、"Happy May Day"というタグだけさげて、
こっそり玄関先のドアにさげて回るのですが、それは子どもにとっても大人にとっても、
とてもドキドキする楽しさに溢れていました。

ご近所の皆さんがドアを開けて、誰からかも分からない
小さな季節のお花のバスケットがさがっていたら、それはやはり、
とてもサプライズな嬉しい出来事ではないかと思います。

その後、道端で会ったご近所さんから、
「お花のバスケット、あなたたちからの贈りものでしょう?
どうもありがとう!とても素敵!」
とお声をかけて頂きました。


春の恵みを、自分ひとりで楽しむのは、やはり寂しいもの。
多くの人たちとシェアしてこそ、その歓びとしあわせはさらに大きく広がります。


大人は、時々こうして子どもの無邪気さの力を借りて、共に季節を楽しむのも素敵だと思います。


皆さんも今年は是非、近くにいる子どもたちと一緒に
"Happy May day"を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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*このMay flower basket は、立派なアレンジである必要はまったくありません!

 缶や小さなバスケット、空き瓶にワイヤーで取っ手を付けたものなどに、庭からの恵みに感謝しながら
 花々やハーブを摘み、子どもと一緒に楽しくバスケットに挿し、それをご近所さんやお知り合いに分かち合う
 ーーーその気持ちだけで十分だと思います。

 そしてその素朴さとさりげなさこそ、このMay flower basketの持ち味と言えるでしょう。

 また、日本では防犯上、名前を伏せたサプライズの物を玄関先に置くことは懸念されることもあるかと思います。
 その場合は、やはりバスケットなどにお名前入りのタグやカードを添えるか、直接お渡しするのが安全かと思います。

プロフィール

加藤万里 -Mari-Kato-

フラワーデザイナー

加藤万里 -Mari-Kato-

カリフォルニア・バークレー在住、フラワーデザイナー。ハーバリスト。
1994年より、ロスアンジェルスで花教室FOLIAGEを主宰。
2004年秋より処点をバークレーに移し、06年、あらたに「お花会」という形でFOLIAGEを再開。その後、アロマクラス、ハーブクラスも増設。

フラワーアレンジ、アロマ、メディカルハーブ、ガーデニング、インテリア、手仕事など多方面から、花のある暮らしを提案すると共に、植物を通して、目に見えない大事なことを思い出していくための機会と場になることを願い、会を開催している。

また、昔ながらの暮しの知恵を取り入れ、現代風に楽しむことで、忙しい日々を送る現代人が忘れていることを取り戻していきたいと考え、スローライフを自ら実践し、提案している。

ロスアンジェルスの日本語情報誌「LIGHT HOUSE」にて、98年から02年まで「カリフォルニア花日記」「シンプルエコライフのすすめ」などの記事を連載。
09年春と秋にバークレーで、食とお花、食と手仕事をコラボさせたワークショップ付きの「カフェ・イベント」を開催。好評を博する。

著書に、ロスでの花生活を綴ったエッセイ『ガーデンダイアリー カリフォルニア 花と暮らす12か月』(講談社文庫 98年刊)がある。