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2010.05.09

vol.3 Rose water を手作りする。

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     バラの季節がやってくると、
     にわかに私の暮らしは慌ただしくなります。

     一年中で一番好きなこの季節、
     バラをただ眺めるだけでは飽き足りず、

     この美しさと恵みを
     暮しのあれこれに利用させて頂きたいーーーと、
     そわそわしてしまうのです。

                   *


     昨年はバラのお酒を仕込み、
     家族や友人、お花の会の参加者の皆様に
     とても喜んで頂きました。


     今年は原点に戻り、
     ローズ・ウォーターを手作りしてみることに。

     フローラル・ウォーターは
     通常はエッセンシャルオイルの蒸留抽出の過程で
     副産物として生まれるもので、市販品もありますが、
     家庭でも手軽に作れる方法があります。


     熱湯を注いだり、
     火にかけて作る方法もありますが、

     私はフラワーエッセンスを作る時のように

     まずは純粋な、
     太陽の力を借りた、
     素朴な方法で作ってみました。


     昔、人々がまだ、神と素直に純粋に繋がっていた頃ーーー

     どんな心持ちで花というものを摘み、
     その力を残そうと試みていたのかーーーーー

     その心を一緒に感じてみたい思いからーーーです。

     幸い、私の住んでいる所は車の往来も少なく、
     バークレーの気候と日差しも ローズ・ウォーター作りに
     適しているように思えるのでこの方法を選びましたが、
     環境や状況が整わない方は
     ご自分に合った作り方をされるとよいと思います。


                    *


     我が家の庭には、バラが少なくとも20種は植わっていますが、
     その中でも、香りが特に優れているものーーー

     オールド・ローズやイングリッシュ・ローズは
     モダン・ローズよりも香りが強いので、
     それらが満開になった頃にローズウォーター作りを始めます。

     花びらが思いの外たくさんいるので、
     その花の開花具合と晴れた日の午前中というタイミングとを、
     見計らうことになります。


     さて、いよいよ花を摘み始めると、
     バラの美しさとその恵みに、
     次第に胸が一杯になってしまいます。


     いつの間にか、
     一輪一輪に「ありがとう」という言葉がこぼれて。。。


     「幸せ」、「優雅」という言葉は、
     本当に、この花のためにあるのかもしれないですね。


     そしてその摘んだ花びらをお水につけて眺めると、
     まるで花の精が水の中に溶けていくかのようです。


     「転写」とは、花の香りだけを移すのではなく、
     その花の持つエネルギー、資質を移す神聖なことなのだと
     バラの水を見ていると、感じるのです。


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     フローラル・ウォーター、フラワーエッセンス、
     そしてアロマの精油を作る時にも
     なるべく朝に花を摘むのが良いとされています。

     それは、花の中に含まれる精油分が日が高くなるにつれて
     揮発してしまうからなのですが、

     私はその他に、早朝のまだ汚れのない澄んだ空気の中で
     花の清らかな成分が摘まれる方がさらに良いからなのではーーーー
     とも思っています。


     また、なるべく花の部分に手を触れないようにして花を摘むのですが、
     それは酸化や手の汚れ、脂質分の流出などを懸念してのことだけではないと
     思っています。


     バラを摘んでいると、花の持つその高貴なバイブレーションに、
     自分を「無」にして
     摘ませていただかなければーーーーと ふと思わされます。


     純粋にこの花の持つエネルギーを生かすためには、
     自分の持つ邪念や想いといったものを消してこそ、
     花そのものの力を
     そのまま残していけるように感じるのです。


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     写真家の故星野道夫さんをご存知でしょうか。

     星野さんのご著書「森と氷河と鯨」に、
     生前、ご親交のあった クリンギット・インディアンのボブさんの
    「おばあさんから聞いた大切な言葉」として載せられていたその言葉を読み、             はっとさせられたことがあります。

     それは、クリンギット・インディアンに昔から伝わる
     薬草を採る時の心の在り方が綴られているものでした。

     薬草を採りに行く日は、良いことだけを考え、清らかな水で顔と手を洗うようにーーー。
     そのように自分自身の身と心を清めることで、
     今日採られる植物も共に魂を捧げる準備を始めている、
     という内容です。

   
     人間であろうと植物であろうと、魂を持つという点では、同じ自然の子ども。
     互いのいのちへの敬意を思い出させられる文に、
     私はとても共鳴したものでした。
   

                    *

     私たちは、
     植物を「とる」のではなく、
     「とらせていただいて」いるのかもしれないですね。。。

     花の美しさとその持ちあわせる力を見る度に、

     私は神様に通じる神聖なものを感じずにはいられません。


     そして、私はいつも思うのです。


     生きとし生けるものは

     神様からの糸で結びついた、

     いつの時も平等で
     対等で
     互いに愛に溢れた「仲間同士」であることを。。。


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    ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

❦ ローズ・ウォーターの作り方 ❦

<材料>

 ・オーガニックのバラの花びら 100g(朝の9時迄に摘む)
  ・ミネラルウォーター 約600cc
  ・金属やプラスティックをなるべく避けた漉し器(私は竹製の茶こしを使用しています)
  ・ガラス容器
(・火を使う方法の方は、琺瑯かステンレス鍋)

 <いづれも出来上がったら冷蔵庫に保管し、2週間以内に使い切ることをお勧めします。>

*日光で作る作り方

  1)朝9時までに、オーガニックのバラの花の部分になるべく直接触れないように
    花を摘む。

   2)ガラスのボウルに、ミネラルウォーター600ccを入れ、この中に水面が見えなくなるまで、花びらを浮かべる。     (約100g)

   3)このボウルを日光の当る場所に正午まで置く。

   4)その後、指先が水に触れないように棒や箸を使って花びらを取り除き、
     こし器で濾し、消毒済みのガラス容器に入れる。


*熱湯を使った作り方

  1)ミネラルウォーターを湧かし、熱湯を作る。

   2)バラの花びらを入れた鍋に、1)の熱湯を入れ、2時間ほど置く。

   3)漉し器で漉した後、消毒済みのガラス容器に入れる。


*煮沸による作り方

  1)琺瑯かステンレスの鍋に摘んだ花びらを入れ、ミネラルウォーターを注いで火にかける。

   2)沸騰したら弱火にして30分間煮沸する。

   3)冷めたら、棒やお箸を使って花びらを取り除き、漉し器で漉した後、消毒済みのガラス容器に入れる。


  


     ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


❦ ローズ・ウォーターの使い方 ❦


*スキン・トナー (収れん、しみ、しわの予防、皮膚の若返りに)

DSC_0016-2.jpg<材料>
・ローズ・ウォーター(精製水とのブレンドでもよい)ー90ml
・植物性グリセリン(保湿)ー10ml
・精油(ローズ/ゼラニウムで代用も可)ー2〜3滴

<作り方>
1)ビーカーにグリセリンを入れ、精油を加え、ガラス棒かつまようじで混ぜ合わせる。
2)ローズ・ウォーターを加える。
3)消毒済みのガラス容器にうつし、冷蔵庫で保管する。使用時はよくふってから。
<稀に肌に合わないことがありますので、パッチテストを行ってから使用して下さい。>

*バラ水のブラッシング (シャンプーできない際に、髪をきれいにする方法。)

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ガーゼを4、5cm角に数枚切り、ローズ・ウォーターに浸しておく。
それをブラシの(できれば天然毛)毛部分につきさして貫通させ、髪をとかす。
汚れがついたら新しいガーゼと取り替え、汚れがなくなるまで続ける。



*リネンウォーター


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スプレーボトルにローズ・ウォーターを入れ、
アイロンをスチームなしの設定にして、
その都度スプレーしながらアイロンをかける。

バラの香りを楽しみながらのアイロンがけは、
いつもと違う優雅な気分に。。。

アイロンがけした布地には、
ほのかにバラの香りが残って。

プロフィール

加藤万里 -Mari-Kato-

フラワーデザイナー

加藤万里 -Mari-Kato-

カリフォルニア・バークレー在住、フラワーデザイナー。ハーバリスト。
1994年より、ロスアンジェルスで花教室FOLIAGEを主宰。
2004年秋より処点をバークレーに移し、06年、あらたに「お花会」という形でFOLIAGEを再開。その後、アロマクラス、ハーブクラスも増設。

フラワーアレンジ、アロマ、メディカルハーブ、ガーデニング、インテリア、手仕事など多方面から、花のある暮らしを提案すると共に、植物を通して、目に見えない大事なことを思い出していくための機会と場になることを願い、会を開催している。

また、昔ながらの暮しの知恵を取り入れ、現代風に楽しむことで、忙しい日々を送る現代人が忘れていることを取り戻していきたいと考え、スローライフを自ら実践し、提案している。

ロスアンジェルスの日本語情報誌「LIGHT HOUSE」にて、98年から02年まで「カリフォルニア花日記」「シンプルエコライフのすすめ」などの記事を連載。
09年春と秋にバークレーで、食とお花、食と手仕事をコラボさせたワークショップ付きの「カフェ・イベント」を開催。好評を博する。

著書に、ロスでの花生活を綴ったエッセイ『ガーデンダイアリー カリフォルニア 花と暮らす12か月』(講談社文庫 98年刊)がある。