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2010.12.14

vol.14 クリスマス/木への想い

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ホリディ・シーズンまっただ中となりましたが、
皆様お元気でお過ごしですか?

私も、自分の主宰するお花の会で、
針葉樹や木の実を使ってクリスマスのリースなどを
皆さんと作る場を持ち、
いよいよクリスマスの気分が高まってきております。

針葉樹の、心身を浄化してくれるような
清々しい香りに包まれ、

ひとつひとつの木の実の造形の奇跡に あらためて感嘆しながら
クリスマスの飾りものをこしらえていると、
自然に気持ちは一年をふり返り、
お世話になった方々に想いを馳せ、
そして
冬の間でもこうして私たちに恵みを与えてくれる 自然というものに、
ふつふつと感謝の気持ちが湧き起こってきます。

私にとってのクリスマスは、
毎年 そんな一年への回顧であり、
感謝の時間でもあるのです。

             ..。。。..


IMG_6209-121310.jpgもう10年以上も前のことでしょうか。

ヨセミテに出かけた時のことです。
何千年ものいのちを持った大木に出会い、
私は思わずその木に歩み寄り、
自分が小人のように思えるほどの
大きな大きな木の幹に手を当てて
ふと見上げてみました。

その時ーーー
木と私の目が合ったようなーーー

目と目、と言うよりは、
心と心が、意識と意識が合ったような、
そんな感覚にとらわれました。

言葉という枠を超えて、
木の存在そのものが
私に何かを語りかけてきました。

とてもシンプルだけれども、
「真実」を含んだ 大事なことのように感じました。

樹齢を重ねた木の、
深さ、寛容、愛ーーーーーそして、叡智。

そのようなものが、言葉とも言えない言葉として
シャワーのように、私に降り注いできたのです。

その中で、
私は自分のいのちと木のいのちを溶け合わせ
ひとつになってみたいと、感覚を研ぎ澄ませてみました。

彼らの持っている 愛や寛容や叡智というものはーーー

私たち人間も本来持ち合わせている、
共有した真理であるーーーという記憶が、
私の中で強く、蘇りました。

その瞬間、
私の目には涙があふれ始めました。


木と私たちは、
植物と人間という隔たりを超え、
元々 「生」や「愛」を共有している、
同じ地球上の生き物であり、ファミリーなのだと感じたのです。

そこに、「植物、人間」「守られる、守る」といった
分別や分離、隔たりは、ありませんでした。
互いに愛を持ち、生きている、同じ地上の 神様のこどもでした。

木は自分であり、自分は木でもあったのです。


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              ..。。..

木のみならず植物を眺める時、
切らせて頂く時、
飾らせて頂く時ーーー

私はいつもその、ヨセミテでの経験を思い出します。

自分を思うように植物を思い、
自分が扱われたいように扱い、
いのちとして愛おしい気持ちで観察し、
大事にしたい、
愛したいと思うのです。

そして時々思うのです。

木たちは、
私たち人間が、
生きとし生けるものすべてと
心を通い合わせて生きるというーーー
太古の昔には当たり前であったその在り方を取り戻すのを
じっとそこで佇み、
静かに待っているのではないかとーーー。

そのようなことを思いながら、
今年もまた私は、
クリスマスの飾りものを作り、
木や自然に、
想いを馳せるのです。


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今年の春からスタート致しました「スローライフ イン バークレー」をご愛読頂きまして、どうも有り難うございました。  来年もまた、宜しくお願い申し上げます。皆様も良いお年をお迎え下さいませ。

プロフィール

加藤万里 -Mari-Kato-

フラワーデザイナー

加藤万里 -Mari-Kato-

カリフォルニア・バークレー在住、フラワーデザイナー。ハーバリスト。
1994年より、ロスアンジェルスで花教室FOLIAGEを主宰。
2004年秋より処点をバークレーに移し、06年、あらたに「お花会」という形でFOLIAGEを再開。その後、アロマクラス、ハーブクラスも増設。

フラワーアレンジ、アロマ、メディカルハーブ、ガーデニング、インテリア、手仕事など多方面から、花のある暮らしを提案すると共に、植物を通して、目に見えない大事なことを思い出していくための機会と場になることを願い、会を開催している。

また、昔ながらの暮しの知恵を取り入れ、現代風に楽しむことで、忙しい日々を送る現代人が忘れていることを取り戻していきたいと考え、スローライフを自ら実践し、提案している。

ロスアンジェルスの日本語情報誌「LIGHT HOUSE」にて、98年から02年まで「カリフォルニア花日記」「シンプルエコライフのすすめ」などの記事を連載。
09年春と秋にバークレーで、食とお花、食と手仕事をコラボさせたワークショップ付きの「カフェ・イベント」を開催。好評を博する。

著書に、ロスでの花生活を綴ったエッセイ『ガーデンダイアリー カリフォルニア 花と暮らす12か月』(講談社文庫 98年刊)がある。