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2011.04.15

vol.19 シードバンク(2)

Baker Creek社を設立したJere Gettle氏は、
1998年、
なんと自身が17歳の時にBaker Creek の最初のカタログを発行し、
それから1400種の野菜、花、ハーブの種を扱い、
アメリカで一番大きいエアルーム種のセレクションを持つまでになりました。

彼が初めて植物を植えたのは、3歳の時。
その時から将来はガーデン関係の仕事をしたいと思うようになった
というのですから驚きです。

まるで天職として小さな時に既に与えられていたような、
そんな運命を感じさせられるエピソードですね。


Baker Creek社のポリシーは、
「non-Hybrid, non-GMO, non-Treated(無農薬),
non-Patended(一度種を購入したら、自由に他の人にシェアしていける)」。

種は70か国から仕入れており、
資金のない小さなファームなどは、
certified organicの認証を取得するのが困難な場合もあります。

そんな理由からも、
すべての種にオーガニックのマークを付けることができないけれども、
上記の4つのポリシーには出来るだけ沿い、守っていこうという考えなのだそうです。

また、seminis というGMOを行っているMonsont 社所有下にある種は絶対購入しない、
またその関係の方たちとは仕事上のお付き合いもなしという徹底ぶりです。

彼が、いかに種というものを通して社会を良くしていきたいのかーーー。
その心意気を感じずにはいられません。

                 *

Baker Creek Heirloom Seedsでは
毎年120頁以上のカタログを25万人ほどに送っていますが、
Jereのパッションは、ただ種を販売するにとどまっていません。

ガーデン、ホームステッダー(homesteaders/野菜と動物を育てる人たち)、
ナチュラルフーズに興味のある人たちを集めるために、
2000年からは、交流、情報交換などの場として
フェスティバルも開催しているそうです。

また、オーガニック・フーズをサポートするために、
エアルームの種を地元の学校や非営利団体、
コミュニティガーデンに寄付もしているのだとか。

種は、食とダイレクトに結びついていき、
私たちの健康にも繋がっていく「生きる基本」。
まさに、「農業と料理の heritage (相続財産)」なのです。
彼の仕事は、そんな架け橋のツールとしても活躍しているのです。


また、トライアル・ガーデン、種を集める旅行、教育のための展示会も行うほか、
貧しい国や学校のガーデンに種を寄付したり、
最近では「エアルームガーデナー」という雑誌も発行、
エアルームや野菜についての本も執筆中と、
活動の幅をどんどん広げていっているようです。

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この会社の目指すゴールは、
「better,safer,food supply and to fight GMO food
(より良い、より安全な食べ物を供給し、遺伝子組み換えフードに反対し、阻止すること)」

という、力強いもの。

Jereは言います。
「種はお金はかからないけれど、価値がある」。

この、シンプルな言葉の、
深い、深い意義。


彼は、ローカルの個人ガーデナーにも、
エアルームシードをとっておいてほしいと願っています。
エアルームシードというのは、
家族何代にも渡って、引き渡していくもの。

本来の姿のままのもの。
自然が、私たちに与えてくれた いのちそのもの。

ほんものを、私達個人個人から守っていかなければいけない。
それが、私たち自身を守ることであり
地球を守ることでもあるのです。


そんな意識に気付かせてくれることこそ、
Jereの最大の功績なのではないかと思っています。

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天井が高く、明るい店内。季節により、穀物の量り売りも。種の種類も豊富。トマトだけでも190種!メロンは100種。



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Baker Creek Heirloom Seeds
<ミズーリ店>
2278 Baker Creek Road
mansfield,MO 65704

<ソノマ店>
199 Petaluma Blvd N
Petaluma, CA 94952
(417) 924-8917

www.RARESEEDS.COM



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プロフィール

加藤万里 -Mari-Kato-

フラワーデザイナー

加藤万里 -Mari-Kato-

カリフォルニア・バークレー在住、フラワーデザイナー。ハーバリスト。
1994年より、ロスアンジェルスで花教室FOLIAGEを主宰。
2004年秋より処点をバークレーに移し、06年、あらたに「お花会」という形でFOLIAGEを再開。その後、アロマクラス、ハーブクラスも増設。

フラワーアレンジ、アロマ、メディカルハーブ、ガーデニング、インテリア、手仕事など多方面から、花のある暮らしを提案すると共に、植物を通して、目に見えない大事なことを思い出していくための機会と場になることを願い、会を開催している。

また、昔ながらの暮しの知恵を取り入れ、現代風に楽しむことで、忙しい日々を送る現代人が忘れていることを取り戻していきたいと考え、スローライフを自ら実践し、提案している。

ロスアンジェルスの日本語情報誌「LIGHT HOUSE」にて、98年から02年まで「カリフォルニア花日記」「シンプルエコライフのすすめ」などの記事を連載。
09年春と秋にバークレーで、食とお花、食と手仕事をコラボさせたワークショップ付きの「カフェ・イベント」を開催。好評を博する。

著書に、ロスでの花生活を綴ったエッセイ『ガーデンダイアリー カリフォルニア 花と暮らす12か月』(講談社文庫 98年刊)がある。