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2012.09.21

vol.33 バークレーのリサイクル/リユース・ライフ

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私の住むバークレーは、
全米でも有数のエコな街で知られています。

8年前、バークレーに越してきて何よりも感心させられたのは、
住人の意識が、サステイナブルーーー永続可能な、循環型の暮らしをすること、
それに近づくことに、非常に重きを置いていることでした。

そして、それがただの机上の概念で終わることなく、
しっかりと実現されたり試されたりしていることに、感激したものです。


それは、まずはバークレーの友人、知人のお宅を訪ねる先々で感じられました。

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食事やお茶に招かれると、
紙ナフキンではなく、布ナフキンが自然に出され、
聞けばキッチンのテーブルはリサイクルの木材で作ってもらった物であったり、
庭は自給自足に歩み寄った、野菜や果物を草花と一緒に育てている人が多く、


又、レスキュー・ドッグ、キャットと言って、災害や事故、その他の理由で飼い主がいなくなったり、救出されたりした犬や猫たちを引き取って、家族の一員としている人が多いことにも、
気付かされました。


さらには、庭で飼う鶏小屋やフラワーベッド(花壇)の仕切りを、
バークレー中から見つけた廃材や、捨てられた木材でリサイクルして作ったという人もいて、
感心したものです。

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街の中を車で走っていると、
左の写真のようなリサイクルものを利用したあれこれを
目にすることも度々です。
(写真は、道路名などの標識をリサイクルして、
 アパートのゲートに仕立てたもの)

新しく買う前に、
まずは既にある物をリサイクル、
リユースする方法を選び、
ゴミが出ない工夫をしたり、

世の中のためになるようなシステムを積極的に暮らしに取り入れている人がこの街には多いのです。



* * * * *


当時、娘の通っていたシュタイナー教育(ウォルドルフ・スクール)の幼稚園では、
実に気持ちのいい循環型の暮らしが営まれていました。

週に一度、スープ・デイといい、
各家庭から持ち寄ったオーガニック野菜(買ったものでも育てたものでもよい)を使って、先生が学校でスープを作って下さる日がありました。
子どもたちも時にはお手伝いをし、食材がどのような過程で料理になっていくのかを見守ります。
どうしても食べ切れずに残った食物は、最後に裏庭に設置されたコンポスターに還されるのです。

その一環した流れを小さなうちから見て、子どもたちは循環型の暮らしというものを
肌で覚えていくのだなあと感じました。

IMG_6070-092112.jpg又、学校では食事、おやつの際にも、プラスティックの容器を使うことはありませんでした。
使う陶器の容器は、時には割ってしまうこともあるかもしれません。けれども、そんな経験を通し、子どもたちは自然に物の扱い方を覚えていきます。

そして、やはりナフキンは、父兄のボランティアで作られた手作りのコットン・ナフキンを使用していました。
そのナフキンの洗濯も、週に一度、各家族に順番がまわってきて、皆で労働を補い合います。

もう少し学年が進むと、行事やクラスの集まりの際に ポットラック(料理の持ち寄り)の機会が増えますが、
その場合も、各自お皿やカトラリー、マイカップを持参する人が殆どでした。

使い捨ての容器を使う場合も、
エコ・プレート(竹やとうもろこし、ソイーー大豆などの素材で作られたもの)を利用する人たちが多かったのを覚えています。

バークレー住人は、決して裕福な暮らしをしている人たちばかりではありません。
それでも、多少値段のはるエコ・プレートを使用する心意気は、
やはり人々の意識の中での優先順位が しっかりと定まっている現れなのだな、と
思わされました。

このように
バークレーの人々の暮らしぶりは比較的質素で、華やかさには欠けますが、

豪華な生活よりも地球の未来が健康で平和であることを望み、
それに自分の力を注げる暮しを選び、
喜びと誇りにしている人たちが多いと言えます。


* * * * *

バークレー市のサステイナブルな意識は、
ユニークな取り組みとして、あちこちに垣間見れます。
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週に何度か開催されるファーマーズ・マーケットでは
普通ごみ、プラスティック用のごみだけではなく、
コンポスト用のごみ箱も設置されていますし、
プラスティック・バック(ナイロン袋)の回収箱もあり、
これをショッピングの際に再利用できるようにもなっています。

又、市で回収したグリーンごみから作られた
コンポスト土が、ファーマーズ・マーケットに運び込まれ、
市民に分けられていたこともあります。
(現在はバークレー・マリーナにて、月に一度、市で作ったコンポストの一部を市民に無料で分けているそうです)

バークレー市では、2007年から、一家にひとつ
小さなキッチン・コンポスト用容器が配られ、

庭がない人でもキッチンから出た生ごみを普通ごみに捨てるのではなく、
その小さなコンポスター容器に集め、
それをグリーンごみの大きなごみ箱に捨てて 回収日に出せるようになりました。

この取り組みも、画期的なことだったと思います。


街にあるお店も、グリーン、エコを考慮したものが、全体的にとても多いと思います。

そのシステムも、
物々交換(トレード)に繋げていく流れを採用しているところもあり、
とても興味深いものがあります。


下に、「グリーン意識」を実践しているお店を少しだけ、紹介させて頂きました。


これらのお店が
日本の皆様の参考になったり、インスピレーションの源泉となりましたら幸いです。


* * * * *


GROVE STREET Kids(リサイクルの子ども服、マタニティ服)........................................

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ユーズドの赤ちゃん、子ども、妊婦さんの洋服、靴を置いてある。おもちゃに限っては新品物のみ販売。

ユーズドの服などを売りたい場合は、着古しすぎていない gently used の物で、既に洗濯済み、しみなし、穴なし、ボタンがすべて付いてある物に限って受け付けるという規約を設けているそう。

売った物の代金は、キャッシュ・バック(現金受け取り)かストア・クレジット(そのお店での買い物/物々交換の意味合いに繋がる)かのいずれかを選ぶことによって、金額も多少変わるシステム。

右下の写真は、店の片隅にある、子どものプレイコーナー。


TOY GO ROUND(リサイクルの子どものおもちゃ)...................................

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おもちゃのリサイクル販売店。(新品商品もあり)店内には、本をはじめ、乗り物、木やプラスティックのおもちゃ各種が所狭しと陳列されている。

不要になったおもちゃを店に預けて自分のアカウントを作ってもらい、自分の預けたおもちゃが売れた場合、売値の半額が自分のアカウントに入り、それで又、別のおもちゃを「買う」こともできるシステム。

今は季節柄、ハロウィーンの衣装リサイクル求む!の宣伝も出ていた。


OHMEGA SALVAGE(家、建物関連のリサイクル品/ジャンク各種).............................

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建築物のHeritage(歴史、遺産品的な意味合い含む)を残すと共に、環境をも守りたいというコンセプトのお店。

お店には、家、建物に関連するあらゆる物(家具、窓、ドア、ヒーター、暖炉、照明、バス、トイレ、庭関連の物、建物の装飾部分やスイッチプレートなどの細かい金具、部品まで)とにかくありとあらゆるユーズド商品が置かれており、家の改装をする人には掘り出し物の宝探しができそうな、バークレーの名物的なお店。


THE WOODEN DUCK(リサイクルの家具)......................................

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可能な限り、ローカルの1920年以前の建物の回収木材を再利用して、新しい家具を作るようにしている。1920年代以前の木材を使う理由は、古い木材ほどゆっくりと乾燥されているため、割れにくくしっかりしていることと、味わいが出ているため。又、新しい建物を次々と壊すという現実に加担しないエコの考えから。(但し新品商品もあり)

右下の数字入りのテーブルは、Cal(カリフォルニア大学、バークレー校)のスタジアムから回収した木材を、テーブルとして再生させたもの。

プロフィール

加藤万里 -Mari-Kato-

フラワーデザイナー

加藤万里 -Mari-Kato-

カリフォルニア・バークレー在住、フラワーデザイナー。ハーバリスト。
1994年より、ロスアンジェルスで花教室FOLIAGEを主宰。
2004年秋より処点をバークレーに移し、06年、あらたに「お花会」という形でFOLIAGEを再開。その後、アロマクラス、ハーブクラスも増設。

フラワーアレンジ、アロマ、メディカルハーブ、ガーデニング、インテリア、手仕事など多方面から、花のある暮らしを提案すると共に、植物を通して、目に見えない大事なことを思い出していくための機会と場になることを願い、会を開催している。

また、昔ながらの暮しの知恵を取り入れ、現代風に楽しむことで、忙しい日々を送る現代人が忘れていることを取り戻していきたいと考え、スローライフを自ら実践し、提案している。

ロスアンジェルスの日本語情報誌「LIGHT HOUSE」にて、98年から02年まで「カリフォルニア花日記」「シンプルエコライフのすすめ」などの記事を連載。
09年春と秋にバークレーで、食とお花、食と手仕事をコラボさせたワークショップ付きの「カフェ・イベント」を開催。好評を博する。

著書に、ロスでの花生活を綴ったエッセイ『ガーデンダイアリー カリフォルニア 花と暮らす12か月』(講談社文庫 98年刊)がある。