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2014.12.16

vol.51 いつの時も植物の声を聞いて

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今年もあっという間に一年の締めくくりの月、12月を迎えました。

今年も主宰するお花の会で、
ご参加者の皆さんとクリスマスリースやスワッグを作成するため、
もみや柊、ジュニパー、シダー、ヘムロックなど、
さまざまなクリスマスグリーンをフラワーマーケットで揃えました。

まるで森林の「気」がもたらされたかのように、
普段のお花メインの季節とはまた違った、清浄なる雰囲気が
花市場にも満ち満ちています。

この清浄感漂うクリスマスグリーンを、各家庭で飾るということは、
やはりこの一年を振り返り、
植物をはじめとした生きとし生けるもの、周りの人々に感謝するーーー

そのような締めくくりの時にふさわしい
特別な時間と場を与えられているということなのだと思います。


✷ ✷ ✷ ✷ ✷


毎年、仕入れをしたクリスマス・グリーンを眺めていると、
この枝や木の実がどこから来たのかを想像します。

枝や木の実は植物の一部分の姿で、
片割れです。


どのような地に、この枝や木の実の大元である木は自生し、
どんな天候と環境の中、どんな景色を眺めて生きていたのだろう。

清々しい針葉樹の香りは、その土地の微妙な成分を含みながら
醸し出されている神秘的なものかもしれないし、

木の実は、季節の変化を感じながら花の後に実をつける準備をし、
誰に教わらなくとも、こんな見事な造形を作り上げ、完成させ。

ーーー想いを巡らせれば巡らせるほど、
すべては、地球の奇跡だと思わずにはいられません。


そしてその恵みを想うと、溢れるような地球の恩寵を感じ、私の心はふるえ、涙が出ます。


当たり前のようにこの地に生えている木も、植物も、そこに集まる虫も鳥も動物も、
そして人間も、すべては同じように、奇跡なのだと思います。

その気づきは、
植物や地球、生きとし生けるものに対する慈しみや愛に繋がっていきます。


私は、そんな「奇跡を感じる心」を、
このホリディーシーズンのみならず、いつの時も持っていられたら
どんなに素晴らしいだろうと思います。

そしてせめて、この季節だけでも、
自然や生きとし生けるものの声に、
そのいのちの息吹に、あらためて耳を澄ましていたい。


感じようと思う心には、
植物からの声なき声は、しっかり届くと、私は信じています。


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今年もクリスマス・グリーンで、
家の中にさまざまなデコレーションを施しました。

家の中の至る所にクリスマス・グリーンがあると、
「外」との境界線がなくなって、木々と一緒に暮らしているような気持ちになります。

ささやかな飾りであっても、
自然と共に生きる歓びを感じ、感謝の気持ちが湧いてきます。


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左)リース作りなどで余った枝や木の実を、ティンの缶に無造作にさして、カジュアルな玄関先の飾りに。
右)シャンデリアに、ローレル(ベイリーフ)の枝を乗せただけのデコレーション。シルバーや透明なオーナメントもさげると、シャンデリア周りも特別な場所に。

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木の実と一緒に、夏にドライにした庭のセージとマートルの小枝を添えて木のボウルに。
自分で収穫したハーブを慈しんで飾り、一年を振り返るのは、充実した気持ちになります。

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暖炉に、もみで作ったガーラントをさげて。リボンも一緒にアレンジして楽しみます。

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暖炉上も、飾りの小物の間に、クリスマスグリーンやドライの枝もの、実物を添えるだけで、クリスマスらしい雰囲気がぐっと高まります。


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2010年春から、こちらのコラムでは、
さまざまな植物と共にある暮らし、そして手作りを楽しむアイデアなどを
ご紹介させて頂きました。


多大な物と情報が溢れる今日の社会で、
手作りをすることで、自分自身や対象物とじっくり向き合うこと、
そして、ほんものの植物やそのエッセンスを利用した暮らしをすることーーー

それは、「生きていくための本質」でもあると思います。


その、「生きる本質」と共にあることの大事さ、素晴らしさ、楽しさを、
少しでも皆様にお伝えできていたら、本望です。


今回で、こちらの連載を終了させて頂きますが、
これからも皆様の暮らしが、ますます心豊かに幸せなものとなられますよう、
心よりお祈り致しております。


そして、このような貴重な場と機会を与えて頂きました六耀社の宮崎雅子様に
心からの感謝を。

長い間、「スローライフ イン バークレー」をご愛読頂きまして、
誠に有り難うございました。


心からの感謝と共に

加藤万里

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Photographs by Madelene Farin

プロフィール

加藤万里 -Mari-Kato-

フラワーデザイナー

加藤万里 -Mari-Kato-

カリフォルニア・バークレー在住、フラワーデザイナー。ハーバリスト。
1994年より、ロスアンジェルスで花教室FOLIAGEを主宰。
2004年秋より処点をバークレーに移し、06年、あらたに「お花会」という形でFOLIAGEを再開。その後、アロマクラス、ハーブクラスも増設。

フラワーアレンジ、アロマ、メディカルハーブ、ガーデニング、インテリア、手仕事など多方面から、花のある暮らしを提案すると共に、植物を通して、目に見えない大事なことを思い出していくための機会と場になることを願い、会を開催している。

また、昔ながらの暮しの知恵を取り入れ、現代風に楽しむことで、忙しい日々を送る現代人が忘れていることを取り戻していきたいと考え、スローライフを自ら実践し、提案している。

ロスアンジェルスの日本語情報誌「LIGHT HOUSE」にて、98年から02年まで「カリフォルニア花日記」「シンプルエコライフのすすめ」などの記事を連載。
09年春と秋にバークレーで、食とお花、食と手仕事をコラボさせたワークショップ付きの「カフェ・イベント」を開催。好評を博する。

著書に、ロスでの花生活を綴ったエッセイ『ガーデンダイアリー カリフォルニア 花と暮らす12か月』(講談社文庫 98年刊)がある。